図解 仕事のミスが絶対なくなる頭の使い方
20016年8月に出版された『仕事のミスが絶対なくなる頭の使い方』。
「ワーキングメモリ」と「潜在記憶」という脳のメカニズムから、仕事のミスが起こる仕組みを解き明かし、ミスのなくし方を解説したこれまでになかった本として、ロングセラーとなっています。
本書はその内容をわかりやすく図解した本です。
あなた自身そのものともいえる、あなたの「記憶」。それがあなたの仕事、さらには人生にどのような影響を与えているのか?これをちゃんと知っているか知らないかで、仕事も人生も大きく変化します。
仕事のミスを減らす、なくすだけではなく、あなた自身を見つめなおし、仕事、人生に大きな変革をもたらします。
著者: 宇都出雅巳
出版社: クロスメディア・パブリッシング(インプレス)
発売日: 2019/4/1
目次
1章 メモリーミス
1- 人はもともと「忘れる生き物」
2- メモリーミスの主犯格は「ワーキングメモリ」
3- ワーキングメモリの容量はとても小さい
4- ワーキングメモリの源は「注意(アテンション)」
5- 「よし覚えた!」は勘違い?
6- ワーキングメモリは増設できない
7- 「忘れないぞ!」ではなく「忘れる」という前提に立つ
8- メモリーミス対策の基本=メモする
9- 最強のメモ術は「あなたがいちばん気楽にできるもの」
10 – 筆記具のいらないメモ術 → 外部記憶補助
11 – なぜ将棋のプロは棋譜を覚えられるのか?
12 – 脳にやさしい「素早く・ざっくり・くり返し」読書術
13 – 「あれ、どこに置いたっけ?」をなくすには
14 – 「忘れてはいけないのに忘れやすい」人の名前の覚え方
15 – 日本の面積 =「サメに乗ったマラソンランナー」!?
2章 アテンションミス
1- 人は「眼」ではなく、「脳」で見ている
2 – しっかり見ようとすると、見えなくなる
3 – スマホが机にあるだけで脳の働きが悪くなる
4 – 悩めば悩むほどミスが起こるワケ
5 – 「ミスするな!」という注意がミスを引き起こす?
6 – シンプルなフレームワークがあなたを「デキる」人にする
7 – なぜ「基本の徹底」が大事なのか?
8 – 書けば書くほどミスは減り、考えもまとまる
9 – シンプルなチェックリストがミスをなくし、命を救う
10 – 「すぐやる」ことで、ミスは減る
11 – マルチタスクとシングルタスク、どっちが効率的?
12 – ゾーンのポイント① 決まった動作が集中に導く
13 – ゾーンのポイント② ゾーンに入りやすい環境
14 – ゾーンのポイント③ やることを分解・具体化する
15 – ゾーンのポイント④ 仕事は難しすぎず・易しすぎず
3章 コミュニケーションミス
1 – コミュニケーションはキャッチボールではない
2 – 記憶は常に勝手に思い出される
3 – 人は知らないうちに自分の記憶に動かされている
4 – 思い出す記憶を変えるだけで人間関係が楽になる
5 – 「意識の矢印」がコミュニケーションミスをなくす
6 – 「質問は短ければ短いほどいい」科学的理由
7 – 仕事を覚えたころこそミスに注意!
8 – デキる人は相手に「意識の矢印」を向けている
9 – 「意識の矢印」を相手に向ける究極のコツとは?
10 – コミュニケーションミスを絶対なくす方法
11 – 聞くべきは言葉の「答え」よりも言葉にならない「応え」
12 – 相手がいるから一人になれる → 「意識の矢印」がもたらす発見
13 – 短い時間で核心に入る聞き方 → 「事柄」から「人」へ
14 – 「で、あなたはどうしたか?」 → ユークエスチョン
15 – 人間は6つの階層でできている
第4章 ジャッジメントミス
1 – 脳には2種類の思考回路が存在する
2 – 「速い思考」がジャッジメントミスをもたらす
3 – 少しの言葉の違いが相手の答えを左右する
4 – 潜在記憶があなたの判断を左右する
5 – 感情が揺さぶられるほどジャッジメントミスは起こる
6 – 「思い出しやすい」=「よく起こっている」という誤解
7 – 評価基準の違いがジャッジメントミスを招く
8 – 「自分の判断は正しい!」と思い込みたがる脳の性質
9 – 「だから言ったのに!」のウソ → 後知恵バイアス
10 – ジャッジメントミスの特効薬も「意識の矢印」
11 – モノが売れないのはジャッジメントが原因?
12 – それは「事実」? 「意見」? この問いかけがミスを防ぐ
13 – 潜在記憶のワナから逃れるシンプルな方法
14 – 「嘘も百回繰り返せば本当になる」は本当
15 – 子曰く、「ミスを犯しながら、改めないのがミスである」
はじめに
「あっ、すっかり忘れていた!」
「おっと、うっかり見落としていた……」
「そうなんですか!? 勘違いしていました」
「なんで自分はあのときハンコを押したんだろう?」
これまであなたは仕事でどんなミスをしたことがありますか?
またはどんな失敗をしかけたことがありますか?
まったくミスや失敗をしたことがない人はいないでしょうから、この質問に答えられない方はおそらくいないでしょう。
じつは、それらのミスが起きてしまうのは、あなたの記憶力や注意力、コミュニケーション力、あるいは判断力が、低いからではありません。
そもそもわれわれの脳自体が「ミスを起こしやすいメカニズム」になっているのです。
しかもそれは、「忘れた!」という単純な記憶のミスだけではなく、そのほかのさまざまなミスも、脳の「記憶」にほとんどの原因があります。あなたはそのことを知らないがために、ミスが起きてしまっているわけです。
こう言うと、「経験が少ない、または能力が足りないからミスをするだけでは?」と思われる方もいらっしゃるでしょう。たしかに経験不足や能力不足によるミスもあることでしょうしかし、それはほんの一部です。
実際に、経験が豊富、または能力があるからこそ犯しやすいミスもあります。中堅やベテランになれば必ずしもミスが減るわけではなく、逆に増えることもあるのです。
私がここでお伝えしたいのは、「人は自分の脳を過信しすぎている」ということです。
たとえば、あなたは自分の脳がいかに忘れやすいかを知っていますか また記憶は固定化されたものではなく、常に変化していることを知っていますか?
もしくはあなたが、「すべてをありのままにしっかり見ている(聞いている)」と思っていても、実際にはあなたが見たい(聞きたい)ように見て(聞いて)いることを自覚していますか?
もっと言えば「完全に自立した自分」などありえず、「自分の判断」というものは、実は夢物語にすぎないことを知っているでしょうか?
脳は思いのほか頼りになりません。その脳に対して知らず知らずに(悪)影響を与えているのがあなたの記憶であるということが、最近の脳科学、認知科学の研究で急速に明らかになってきています。
こうした事実を知らないままだと、今後も記憶の仕業でミスを犯す危険はなくなりません。
いくら記憶力や注意力、コミュニケーション力、判断力を鍛えようと思っても、脳のメカニズムを知らずにがんばっても、ほとんど効果はありません。
少し驚かせてしまったかもしれませんが、心配は無用です。
なぜなら、あなたがこの本で脳のメカニズムを正しく理解し、それを踏まえた上で対策を打ちさえすれば、ミスのほとんどは防げるのですから。
この本は2016年に出版された『仕事のミスが絶対なくなる頭の使い方』からエッセンスを抽出し、わかりやすく図解したものです。
仕事のミスを以下の4つにわけ、それぞれのミスが起こるメカニズムとミスを防ぐ基本対策を解説していきます。
① メモリーミス(忘れた!)
② アテンションミス(見落とした!)
③ コミュニケーションミス(伝わっていない! 聞いていない!)
④ ジャッジメントミス(判断を間違えた!)
この本は、目から鱗が落ちるような画期的な仕事術を紹介する本ではありません。
この本は、これまでさまざまなビジネス書で紹介されてきた王道テクニックや、上司や先輩から耳にタコができるほど指摘されてきたアドバイスがいかに脳のメカニズム上、有意義なことであるかを説明するものです。
そして、それらの有用性をこれまで以上に納得していただき、「理解」だけではなく「実践」してもらうことを目的としています。
さらに言えば、本書を通じて仕事のミスと向き合うことは、あなたの記憶、あなた自身と向き合うことでもあります。
ぜひ、新たな出会いを楽しんでください!
2019年春 宇都出雅巳
おわりに
本書を通してわれわれの脳がいかにミスを起こしやすいか、そして、意識のする、しないにかかわらず、常にミスを起こしていることを見てきました。
いま、あなたは仕事のミスについてどのような感想をお持ちでしょうか?
「ミスは絶対なくさなければならない」という気持ちから、「ミスはなくせないんだ」という気持ちになっていれば、本書の目的は達成されたと言っていいでしょう。
「じゃあこの本のタイトルは嘘なの?」と思われるかもしれません。
しかし「ミスはなくせない」という事実を受け入れることが、仕事のミスをなくすためのスタートであり、唯一の道なのです。
誰もミスを起こしたいと思っている人はいません。また、ミスを起こしている最中に、「私はミスを起こしている」と思っている人はいません。
仮に「間違っているけれど、これでいこう」と思っている人でも、そうやることが正しいと思っているわけです。
「ミスした!」と気づくのは、いつも後になってからです。
今起こしているミスが何であれ、自分自身はそのことに気づかないというのが、ミスの厄介なところです(他人のミスはよく見えるのですが……)。だとしたら「ミスはしない」と信じ込むより、ミスはするものだと素直に認めればいいのです。
われわれは未来にしろ、目の前の他人、周りの世界、そして自分自身も含めて、不確実で予測不可能なことをよく知らないものです。
だからこそ確実なものにすがりたくなり、すべてわかっていると思いたくなる。確信をもって断言してくれる人についていきたくなる。ミスを認めず、自分の正しさを信じたくなる。
変化が激しく、多様さが増していく世の中で、それはますます強まっている気がします。
しかし、ミスを認めず、受け入れないと、それはさらに大きなミスとなって跳ね返ってくるのです。あなた自身、薄々その事実に気づいていたかもしれないのに……。
本書では脳のメカニズムにまでさかのぼって、4つの仕事のミスについて徹底的に向き合ってもらいました。本書をちゃんと読んだ方なら、「ミスはなくせない」とミスを受けいれて、仕事のミスを絶対なくすためのスタートラインに立たれたはずです。
そして、これからミスをなくそうと取り組んでいく過程で、ミスが起きたときに考えてもらいたいことがあります。
それは、「そのミスは『間違い』なのか、『違い』なのか?」ということです。
ミスは自分が想定したものとの「違い」が生じたときに発生します。
もちろんそのなかには避けなければならない「間違い」もありますが、新たな可能性の扉を開く「違い」もあるはずです。
「失敗は成功の母」
「失敗などない、そこには学びがあるだけだ」
という言葉に象徴されるように、そのミスには未来につながる気づきがあるかもしれません。
「みんなちがって、みんないい」という詩の一節もありますが、そこには協力、協創の可能性が見えるかもしれません。
すぐに「間違いだ!」と落ち込まず、「違った!」と驚いてみることで、「ミス」だと思っていたことが「ミス」でなくなったりもするものです。
こんなふうに仕事のミスをとらえ、楽しんで生かせる人が、仕事のミスをなくせるのだと思います。
最後にこの言葉をお伝えしておきます。
「ミスを恐れて新しいことに挑戦しないことこそ、最大のミスである」
2019年春 宇都出雅巳
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