自分を変える「脳」の習慣 – 頑張らずにうまくいく
「このままの自分では嫌だ……なんとか変わりたい……」
「今度こそ!と変わろうと思ったけど、もうダメだ……」
なんとか今の自分から変わりたい、自分を変えたいと思って、頑張ってみるけれども、結局は挫折してしまう。そして、変われなかった、頑張れなかった自分を責めて落ち込んでしまう。
そんなことはありませんか?
これはあなたの頑張りが足りなかったわけではありません。そもそも、頑張って「自分」を「自分」で変えようという考え方、やり方だとうまくいかないんです。
脳科学や認知科学の研究からは、何か独立した、主体的な意志を持つ「自分」なるものがないことがわかってきています。いくら、あなたが「自分」を叱咤激励して頑張ろうとしたところで、それは幻想であり、自分を変えることはできないのです。
それよりも、この「自分」がどういうものなのか、気楽にちょっと離れて観察することが、自分を変える一歩になります。そうすると、あなたが変えたいと思っている「自分」は、生まれてからこれまでに作られ、蓄えられてきた「記憶」の塊であることがわかってきます。
そうです。あなたは「自分」をいきなり変える必要はないんです。
それよりも、あなたの「記憶」を変えること。それもほんの少しからで構いません。あなたの「記憶」を変えることで「自分」が変わっていきます。
「自分」を変えるのではなく、「記憶」を変える。これが、結果的に「自分」を変えます。
あなたに必要なのは、「自分」から「記憶」に焦点を変えることだけなんです。
著者: 宇都出雅巳
出版社: SBクリエイティブ
発売日: 2018/1/20
目次
まえがき
序章 自分を変えるには、まず記憶を変える
・ 意志で頑張るには限界がある
・ 記憶が人間をコントロールしている
・ 人間の記憶はいい加減なもの
第1章 「できる自信」は誰にでも持てる―「できない記憶」を「できる記憶」に変える
脳はそもそも「新しいことはしたくない」-「できない」と思ってしまうのは記憶のせい
1 「リフレーミング」で記憶の意味を変える
2 「できない」ループから「できる」ループへシフトする「一つだけ」の法則
3 「何ができていないか」を具体化していく
4 スタンフォード流「行動力」が生まれる考え方
5 身体のポーズで「最高の記憶」にアクセスする
6 使う言葉で記憶も行動も変える
第2章 「三日坊主の自分」を「続けられる自分」に変えるー「続かない環境・記憶」を「続く環境・記憶」に変える
1万時間続ければ、誰でもトップレベルに!?
1 ささいなことで、頑張らない
2 環境を変えれば記憶は勝手に変わる
3 三日坊主の自分を責めない
4 最初から頑張らない
5 スランプ状態はブレイクスルーの一歩前
第3章 「行動できない自分」を「行動力のある自分」に変えるー「できない行動」を「できる行動」に変える
「行動力」はその人の性格ではなく「行動」のレベルで変わる
1 「恐れる記憶」に気づいて行動のブレーキを外す
2 スモールアクションで行動してみる
3 次の行動を明確にする
4 最初から「完璧にできる」と思わない
5 最悪の事態を想定する
6 選択肢を絞り込んで脳のメモリを解放する
第4章 すぐイライラ・クヨクヨする自分を変える―感情に巻き込まれずに、活用する方法
感情がなければ判断もできない
1 ネガティブな感情が出たら呪文を唱える
2 イライラノートで感情観察トレーニング
3 心の声に耳を傾ける時間を持つ
4 名前をつけて感情をてなづける
第5章 ミス・失敗だらけの自分を変えるーワーキングメモリを圧迫せず、解放する
集中力とワーキングメモリ
1 覚えておくべきことは少しでも出す
2 考える必要のないことは考えない
3 机の上にスマホを置かない
4 「速い思考」を「遅い思考」でチェックする
5 「6色ハット法」と「ディズニーストラテジー」でアクセスする記憶を変える
6 3つにまとめて記憶する
7 自分にあれこれ指示しない
第6章 「苦手な人・もの」とうまく付き合うー「自分」の記憶も「相手」の記憶も観察する
「どうしても苦手な人」ができる理由
1 「苦手パターン」を中断する
2 自分のメガネを変えて見える世界を変える
3 会話の相手を主語にする
第7章 なりたい自分に変わる「未来記憶」の育て方
未来記憶とは何か
1 週に1回、五感を使って未来を想像しよう
2 未来のセルフイメージで今を生きる
3 ありえない目標と、小さな目標を立てる
4 目の前のことに忙殺されても今までの延長線上にある未来しかやってこない
おわりに 自分の記憶から踏み出す勇気を持とう
はじめに
「すぐだらだらとしてしまう」
「行動力がない」
「ダイエットが続かない」
様々な人が様々な悩みを抱えています。
でも、それを直したい、なんとかしたいと思っても、結局元の通り、といった経験はないでしょうか?
本を読んで「この通りにやってみよう」
セミナーに行って「自分もやってみよう」
誰かに言われて「明日からは変わろう」
と一度は思っても、結局元の木阿弥。
そんな意志の弱い自分を振り返って、さらに落ち込んだりもします。
でも、心配しないでください。
そもそも「変わる」のに自分の意志に頼るから変われないのです。
あなたは自分自身を意志の力で動かせる、動かしてきたと思っているかもしれません。
しかし、それは大いなる幻想です。
あなたを含め、われわれ人間を本当に動かしているのは、あなたやわれわれ自身ではありません。本当に動かしているのは「記憶」です。
あなたは自分が主人公だと思っているかもしれませんが、記憶があなたの主人公なのです。
実は変わりたいのに変われないのも、自分の性格だからどうにもならないと思っているのも、結局「記憶」なのです。
たとえば、あなたが「これはやりたくない」と思っているとき、なぜ「やりたくない」と思っているのでしょうか?
きっと、
「以前似たようなことで失敗したから」
「誰かが失敗したのを見たから」
と考えているのではないでしょうか?
そう、それは、あなたの脳が、「記憶」から引っ張り出してきたことを根拠に「できない」と判断しているのです。
そう考えると、私たちの行動のほとんどは「記憶」によって、規定されている部分があります。
「これはやりたくない」という判断も、
「この人は嫌い」という判断も、
「常にマイナスのことを考える」という癖も、
その多くは、「記憶」がそうさせているところがあります。
だからこそ、意志がどれだけ頑張っても、「記憶」が変わらないのであれば、人は変われないのです。
だったら、どうすればよいか。
それは簡単で、まず「記憶」を変えること。
もしくはその記憶が発動するきっかけをなくしてしまうこと。
つまり、自分の枠を決めてしまっている「記憶」を、自分が動きやすいように変えてあげること。
それが重要なのです。
そうしなければ、いつまでもあなたは「記憶」にとらわれて動くことしかできなくなってしまいます。
「記憶」というのは、ある意味、自分たちの行動を決めている枠であり、プログラムでもあります。自分が「こうしたい」と思っても、そのプログラムが違う方向を向いていれば、それに自分の行動も引っ張られてしまうわけです。
さらに「記憶」が厄介なのは、いつも記憶に引っ張られながら動いていると、そのパターンが強化され、そこから抜けづらくなることです。
それでも、その「記憶」のプログラムが何をきっかけに動き出し、どんなふうに自分の行動を定めているのかを知ることができれば、少しずつ自分を変えていくことができます。
「記憶」に関しては、脳科学や認知科学の分野において急速に研究が進んでいます。本書は、こうした最新科学の知見を踏まえて、私が15年以上にわたってコーチングやセミナーを通じてのべ5000人以上もの人とかかわり、「記憶」を変え、「自分」を変えるサポートをしてきた考えや手法をまとめたものです。
なかなか自分を変えられない、
自分の「枠」から出られない、
と思っている方に、ぜひ手にとっていただけたらと思います。
2017年12月
宇都出雅巳
おわりに 自分の記憶から踏み出す勇気を持とう
「記憶……記憶……記憶」。本書では「記憶」という言葉が数え切れないほど出てきました。
本書を読むことで、これまで「自分」だと思っていたことも「記憶」として捉え始めてきたことでしょう。そして、今この瞬間も起こっている、記憶の動きを自覚し始めているでしょう。
あなたは自分の記憶を使って物を見て、考え、行動しています。記憶のパターンに大きな影響を受けていて、それを避けるのは不可能です。
でも、あなたを動かしている記憶のパターンから抜け出して、記憶を新しくつなぎ合わせたり組み合わせたりすることは可能です。その一歩を踏み出す勇気さえあれば、記憶の支配から逃れられます。
記憶の支配から逃れられれば、新たな経験が手に入り、新たな記憶を作り上げていけるようになります。いつからでも、人間は自分を変えることができるのです。
あなたが今までの記憶に従って生きていくか、新しい行動を取って記憶を作り替え、新しい自分で生きていくかは、あなた自身が選択できます。
あなたが記憶の力を最大限に活用し、「なりたい自分」を生きることを心から願っています。
2017年12月
宇都出雅巳