記憶力が最強のビジネススキルである
「記憶力」というと、試験勉強のときになかなか覚えられない「記憶」がよみがえるかもしれません。また、「最近、もの忘れがひどいなあ」と記憶力の低下を嘆く人がいるかもしれません。
まさか、「最強のビジネススキル」だなんて思っていなかったでしょう。
でも、実はそうなんです。
詳しくは以下に紹介した「はじめに」を読んでみてください。
「言われてみれば……」と、近くて遠い存在だった自らの「記憶」の重要性に驚かれるでしょう。
よくよく考えてみると、どんなスキル・ノウハウにしても、その習得と活用には「記憶」が不可欠です。
それだけでなく、われわれが自身が「記憶」のかたまりであり、この「記憶」をいかにマネジメントしていくかが、仕事の生産性や成功・失敗はもちろん、あなたの成長、そしてあなたの人生全体を左右しているのです。
逆にいえば、この記憶力、本書では単に覚える力ではなく「記憶のマネジメント力」を指しますが、これを身につけることによって、あなたの仕事、人生は劇的に変化します。
著者: 宇都出雅巳
出版社: かんき出版
発売日: 2017/3/8
目次
第1章 記憶はすべての源である
なぜ、記憶が重要なのか?
– 検索エンジンは「何を検索するか?」を教えてくれない
– インターネットが格差を広げていく
– あなたの世界は、広がるどころから狭くなっている
– 人は記憶を使って世界を見ている
記憶は知らず知らずのうちにあなたに影響を与えている
– 人間は誰もが同じように見たり・聞いたり・感じたりしていない
– 理解とは「すでに持っている記憶との新たなつながり」である
– ゼロベースとは「記憶を使わない」ことではない
– 新しい発想は既存の記憶の新たなつながり
– 記憶の外部化は、あなたを無力化する
– 意思決定もすべて記憶から
記憶を制するものがビジネス・人生を制する
– 記憶をマネジメントする
– 記憶を変えれば、世界が変わる
第2章 記憶には人生を変える力がある
なぜ、言葉は現実を引き寄せるのか?
– 言葉の力「言霊」とは記憶の力
– プライミング効果のおそるべき力
人生を変えるカギは、自分を動かす記憶と向き合うこと
– プログラムを変えろ
– 記憶のマネジメント=自己マネジメントが必要不可欠
– 「メタ記憶」を活用し、自分の記憶の動きを観察する
記憶のプログラムを変え、行動力を身につける
– 「行動力」がある人の行動週間とは?
– 「願う」も行動、記憶のチェンジをはじめよう
– まずは自分の記憶と向き合うこと
第3章 誰もがすぐれた記憶力を持っている
あなたには、すでにすばらしい記憶力が備わっている
– 記憶力の悪い人なんていない
– AKB48全員を記憶するか?
– 取引先の顔と名前を記憶するか?
記憶力の違いはどうして生まれるのか?
– なぜ、あの人は名前をよく覚えているのか?
– なぜ、あの人は本の内容をよく覚えているのか?
– 見えないところで差がついている
– 記憶に差をつける行動習慣もまた記憶
– 記憶力の差は「メタ記憶」の差
世界記憶力選手権チャンピオンが使っている記憶術
– 世界記憶力選手権出場者の記憶力が普通?
– 驚異的な記憶術の秘密とは?
– 驚異的な記憶術の秘密1 場所の記憶を活用する
– 驚異的な記憶術の秘密2 具体的なイメージを活用する
– 驚異的な記憶術は、地道で膨大な準備と訓練の賜物
– 「記憶術」は使えそうで使えない
第4章 脳のメモ帳「ワーキングメモリ」のマネジメント法
集中力向上のカギは、脳のメモ帳「ワーキングメモリ」
– 脳のメモ帳「ワーキングメモリ」の負荷を減らせ!
– ワーキングメモリの容量はとても少ない
– 効率的に買い物をすませられるのはどっち?
– 脳のメモ帳ではなく、本物のメモ帳に記録する
– ワーキングメモリの容量は増やせない
– メモ帳がなければ「場所」にメモする
集中力を持続させ、思考力もアップさせる「理解」と「記憶」の力
– 理解とは情報の圧縮である
– 記憶するから理解できる、理解するから記憶できる
– まずは言葉に「なじむ」こと
– 「内容」が無理なら「構造」を理解する
– 誰かに「説明する」ことで自然に理解できる
– 理解を深めるための究極のキーワード「要するに」と「たとえば」
プレゼン・スピーチの達人になる
– 脳は「大雑把」に記憶するのが得意
– 情報を「ピラミッド化」する
– 大量の情報は「階層」を活用して記憶する
本やテキストの内容を効率的に記憶する
– 「本の構成」は理解・記憶しやすいように進化してきた形
– つねに目次を参照する
– 「一本の線」である文章をピラミッド構造に変える
– 「思い出す」ことで自然にピラミッドができる
第5章 頭のいい人がやっている記憶のつなげ方
大量の情報をインプットし、活用できるようになる
– 「つながり」と「繰り返し」で記憶をマネジメントする
– 5000人のお客様の名前と顔、会社名を覚えたホテルマンの記憶術
– 覚えるものを増やすとラクに記憶できるようになる
– 脳細胞は数珠つなぎ、芋づる式が効果的
– 情報のつながりをつくれば、覚えやすくなるだけでなく、思い出しやすくなる
– 情報はひとりでいられない
発想力・創造力を高める
– すぐれたアイデアは大量のアイデアから生まれる
– なぜ、「量は質に転化する」のか?
– 「質問する」ことで自然にリレーションができる
– リレーション化を加速させるのは「問いに変える力」
– リレーション化で人間関係もよくなる
人脈を広げる
– 人脈づくりも「リレーション化」がポイント
– 人が人を呼び、自然とつながりはじめる
第6章 記憶を最適化し「仕事力」を上げる方法
学んだことを「使えるビジネススキル」に変える!
– 成果の出ない「ノウハウコレクター」になっていませんか?
– 学びを成果に変えるカギは「3つの記憶」のマネジメント
– 「知っている=できる」ではない
ビジネススキルは頭ではなく身体で覚える
– 身体を抜きにしたノウハウ・スキルはありえない
– どうすれば、はやく確実に方法記憶に落とし込めるのか?
– 「暗黙知」の本当の意味は「暗黙に知る力」
– ロジカルシンキングをひたすら訓練するバカになるな!
学びを深めるフレームワーク
– 「学習の4段階」と「3つの記憶」
– 「できない」こととどう向き合うかが分かれ道
– できてしまえば「あたり前」のことになる
リーダーシップが身につく「未来記憶」の活用法
– リーダーは未来をありありと思い描いている
– 未来記憶を強めるための最大の武器「インパクト✕繰り返し」
– エモーション化は、モーション(身体の動き)からはじまる
– 五感と感情を増幅(アンプリ)する
– 大切なのはリラックス、胸を開いて身体も脳もやわらかくする
どんな人ともつき合える!「潜在記憶」のコントロール術
– 人間関係を築くためのカギは「価値観」
– 「価値観=潜在記憶」をマネジメントせよ
– 「潜在記憶」の反応から自分の価値観を知る
– 感情的になったときこそ価値観発見のチャンス!
– 相手の「応え」から相手の価値観を知る
– すぐに評価判断せず、価値観を聞く
– 「グローバル化」も記憶のマネジメントから
「フレームを認識する力」の鍛え方
– 情報よりも「情報を見る眼」を記憶する
– 本を読むより著者を読め
– 著者は世界をどう見ているのか?
– メガネをかけ替え、認識を変えると世界が変わる
「伝える技術」を高める、相手の記憶の活用法
– 「伝える」とは「相手の記憶に残す」こと
– あなたの名前・話は相手の記憶に残っているか?
– 相手の記憶に残すポイント1繰り返す
– 相手の記憶に残すポイント2相手のワーキングメモリの負荷を減らす
– 相手の記憶に残すポイント3相手の記憶に結びつける
– 相手の記憶に残すポイント4経験記憶、方法記憶に落とし込む
自分の存在を相手に印象づける記憶とは?
– あなたの記憶が、第一印象を変える
– 数字と名言は、印象を強化する鉄板ワード
はじめに
集中力が続かず、仕事がなかなか終わらない。
「すぐやること」が大事なのはわかっているけれど、なかなか行動できない。
ビジネス書やセミナーで学んだことが定着せず、成果に結びつかない。
営業担当なのに、人の名前を覚えられない、思い出せない。
がんばって考えているのに、いいアイデアがなかなか浮かばない。
リーダーなのに人がついてこない。人を動かせない。
伝えたいことが相手になかなか伝わらない……。
そのカギを握っているのは、あなたの記憶力です。
「記憶力? そんなものすでに過去の遺物でしょう。そんなことより、これからは 〝創造力〟がものをいう時代ですよ」と思った人もいらっしゃることでしょう。
試験勉強ならいざしらず、ビジネスにおいて記憶力なんて必要ない。そもそも、そんなものなくてもインターネットで検索すればどんなことでも調べられる時代じゃないか。
たしかに、そう思われるのも当然かもしれませんし、実際に「〝覚える〟という行為はムダで、ネット検索による〝記憶の外部化〟を進めたほうが効率的である」ということを主張する人もいます。
しかし、それは大きな誤解です。
記憶というと、いわゆる「暗記」を思い浮かべるかもしれませんが、それは記憶という機能のほんの一面にすぎません。
この本を読んでいる今もそうですが、あなたは考えるために何を使っているのでしょう? 新しいアイデアを生み出すために、何を使っているのでしょう?
それは「記憶」です。
普段意識していないかもしれませんが、あなたはつねに「記憶」を活用しています。
今こうやって本を読んでいるのも、文字や言葉の意味を記憶しているからですし、あなたが「ああしたらいいのでは?」と思いついたアイデアだって、まったくのゼロからではなく、あなたが持っている過去の経験や知識、他者の成功、失敗の事例、流行や時勢に関する情報などの記憶が結びついたものでしょう。
このように、私たちは考えるにしろ、何かを創造するにしろ、すでに持っている記憶を使っています。
つまり、記憶がなければ、考えることもアイデアを出すこともできないのです。
記憶の持つ力はこれだけではありません。
第2章で詳しく解説しますが、記憶はあなたの知らないところで、あなたの思考、感情、行動をも司っています。そのことに気づいていない人は、記憶によって知らず知らずのうちに日々の行動を操られているかもしれないのです。
逆にいえば、記憶の働きを理解することができれば、日々の行動を変えることができるようになります。
私たちの人生は、一つひとつの行動の積み重ねですから、それを変えることができれば、人生そのものを変えることができるということです。
さらに、第4章以降で詳述しますが、集中力、コミュニケーション力、伝達力、さらにはリーダーシップといった、一見記憶とはかけ離れているように思えるスキルにも、「記憶」が大きくかかわっています。
ですから、記憶の持つ力を理解し、使い方を少し変えるだけで、あなたの「仕事力」は驚くほど上がっていくのです。そう考えると、あなたの「記憶」の量や質は、あなた自身の「仕事の成果」に大いに影響を与えていることがわかるでしょう。
私は30年以上にわたって速読法をはじめとするさまざまな勉強法、心理学、セラピー、カウンセリング、コーチングといった心理手法などの実践研究を続けてきました。そして、そこで得た知見を、研修やセミナーを通じて数多くのビジネスパーソンにお伝えしてきました。
そのなかでたどり着いたのが、「記憶のマネジメント」の重要性でした。
たとえば、私たちは本を読んでいるように見えて、じつはその本の内容と「自分の記憶」との間に起こる反応・共鳴を読んでいます。これは、誰かの話を聞いているときも同じです。
また、人が悩みや問題を解決したり、目標を達成したりするために働きかけているのも、その人の「記憶」です。
もちろん、前述したさまざまなビジネススキルの習得にも「記憶」が大きくかかわっています。
ビジネスに大切なことはすべて「記憶」につながっていたのです。
私は、たんに「覚える」という側面だけではない、「記憶」の持つすばらしい力を伝えたくて本書を書きました。
本書は、いわゆる「記憶術」を紹介する本ではありません。冒頭でお伝えしたとおり、仕事におけるさまざまな悩みや問題を「記憶のマネジメント」を通じて解決するためのビジネス書です。
記憶。それは、「私たち自身そのもの」といっても過言ではありません。私たちは「記憶」のかたまりなのです。
しかし、これほど大事な記憶を安易に外部化して、そのマネジメントを放棄することはあなたのビジネス能力を知らず知らずのうちに奪っていきます。
「検索バカ」では、これからの時代を生き残っていけません。
逆にいえば、記憶をマネジメントする力、つまり記憶力こそがあなたの仕事力を飛躍的に高め、これからの時代を生き抜いていくための「最強のビジネススキル」になります。
あなたにもっとも近く、しかしまだ手つかずで残されている「記憶」。
まさに「灯台もと暗し」で、これまではあまりにも自分に近すぎるため、なかなかその働きに気づくことができなかったかもしれません。
しかし、本書を読むことで、あなたがご自身の記憶力を高め、呼び覚まし、それを活用することができるようになれば、あなたの仕事、さらには人生に大きな変革をもたらすことができます。
本書があなたの人生を変える一助になれば幸いです。
2017年 春 宇都出 雅巳
おわりに
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
本書では、さまざまなビジネススキルやノウハウを身につけるための記憶の活用法についてお伝えしてきましたが、いかがでしたでしょうか?
私がこの本を書いたのには、理由があります。
私は高校生のころ、ひどい「どもり」に悩まされていました。対面であればなんとかコミュニケーションをとることができたのですが、電話など目の前に人がいない状況で話そうとしても、まったく言葉が出てこない。「このままでは、将来仕事もできないのではないか……」という不安から、人生を悲観していました。
そんなとき、立ち寄った書店で1冊の本が目にとまりました。それは、「自律訓練法」というリラックス技法をもとにした、「どもり」克服のためのノウハウ本でした。
私は「どうせ治らないだろう」と思いながらも、なけなしの小遣いをはたいてその本を買い、恐る恐る試してみたのです。
すると驚いたことに、ほんとうに「どもり」がなくなっていったのです。今では大勢の人前で講演やセミナーを行っているほどです。
私はこの体験をきっかけに、新しい知識やノウハウ、スキルを身につけることのすばらしさ、知らないことの恐ろしさを痛感し、本をたくさん読むようになりました。
また、さまざまなセミナーに参加したり、アメリカに留学したりして、ノウハウ・スキルの習得に多くのお金と時間をつぎ込むようになりました。
ところが、それを続けているうちに、ノウハウを知ること、集めることが目的の「ノウハウコレクター」になっていました。知っているだけで実践することができない「残念な人」になっていたのです。
その事実に気づいたときは、これまでの努力がすべて泡と消えたように思えて呆然としました。
そんな私が立ち直るきっかけになったのが、本書で紹介した「記憶のマネジメント法」です。
これを使えば、ノウハウやスキルを仕事の成果に結びつけることができるのではないか?
その後、試行錯誤を重ねながら、これまで学んできたさまざまなノウハウやスキルを次々に「使えるビジネススキル」に昇華させました。そして、その力を使って、ここまでのキャリアと人生を切り開いてきたのです。
「幸せの青い鳥」のように、人生を変えるために本当に必要なものは、すでに自分のなかに「記憶」という形で存在していたのです。
私は、それをあなたに伝えたくて本書を書きました。
今この本を読んでいるあなたには、すでにすばらしい記憶力が備わっています。あとはその力をどう生かしていくかだけ。本書をガイドにしながら、記憶をマネジメントし、その力をフル活用すれば、あなたが望む世界への扉は開かれるのです。
記憶はとてつもなく大きな力で私たちを動かします。しかし、本書を読んだあなたは、これまでのあなたとは違います。
すでに、記憶に影響を与えることのできる存在になっているのです。
今この瞬間の思い、願い、そして行動、あなたにまつわるすべてのことが、あなたの記憶を変え、あなたのこれからの仕事、人生を変えていきます。
記憶にコントロールされて、不平不満だらけの人生を送るのか?
それとも、記憶をマネジメントして自ら人生を切り開いていくのか?
それはあなたしだいです。まずは一步踏み出しましょう!
そしてあなたの願う人生を切り開いていってください。心から応援しています!
最後に、1年半にわたり粘り強くサポートしていただき、本書を生み出していただいた編集者の重村啓太さんに、感謝の思いをお伝えします。
ありがとうございました!
2017年 春 宇都出 雅巳
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