「名前が出ない」がピタッとなくなる覚え方
「あれ? 名前が出てこない……」
「昨日読んだばかりの本の内容が思い出せない……」
「あら…ハガキを出し忘れた」
などなど、仕事や日常でよくある「ど忘れ」「もの忘れ」。
こういったことがあると、「記憶力が悪いなあ」「物忘れが歳のせいかひどい」なんて自分を責めていませんか?実はそれはあなたの記憶力のせいではありません。
本書では身近なのに実は知らない「記憶」の正体を明らかにし、それを踏まえた「忘れない覚え方」を伝授します。
著者: 宇都出雅巳
単行本: 213ページ
出版社: マガジンハウス (2016/4/21)
発売日: 2016/4/21
目次
第1章 「忘れちゃった」を怖がるな – 記憶はけっこういいかげん
第2章 こんな「思い出せない」がなくなります
CASE 1 「あれ、名前何だっけ?」
知っている人なのにどうしても名前が出てこない
CASE 2 「昨日、何食べたっけ?」
昨日の昼ご飯、何を食べたか思い出せない
CASE 3 「あれ、何を話そうと思ったんだっけ?」
話そうと思っていた話題、いざ話すときになって忘れてしまう
CASE 4 「まずい、消さずに出てきちゃった」
ガスコンロの火を消し忘れたまま、家を出てきてしまった
CASE 5 「何を買うんだっけ」
スーパーで特売品に気をとられ、必要な食材を買い忘れる
CASE 6 「何しにこの部屋に来たんだっけ?」
何かすることがあったのに思い出せない
CASE 7 「どこに置いたっけ?」
ものを家のなかのどこに置いたのか忘れてしまう
CASE 8 「あれ、何が書いてあったっけ?」
本を読んでも、その内容をすぐに忘れてしまう
CASE 9 「しまった、出すの忘れた!うっかりしてた」
通勤途中でハガキを出すつもりだったのに忘れていた
CASE 10 「あれ、なんだったっけ?」
Webサイトの登録IDやパスワードを忘れてしまう
CASE 11 「どんな字だったっけ?」
覚えていたはずの漢字なのに、書こうとすると出てこない
CASE 12 「寝たら忘れちゃった」
寝る前に思いついたアイデアを、翌朝すっかり忘れている
CASE 13 「しまった、傘を置いてきた」
しょっちゅう傘を置き忘れる
CASE 14 「今日、何の日だっけ?」
大事な記念日を、うっかり忘れてしまう
CASE 15 「どうやって使うんだっけ?」
新しいデジタル家電の使い方を覚えられない
CASE 16 「忙しくて○○するのを忘れてた」
するべき仕事が多すぎて、大事な連絡を忘れてしまう
CASE 17 「どうしてできないの?」
新しく習い事を始めても、なかなか覚えられない
CASE 18 「酔っ払って記憶が真っ白」
お酒を飲んで話したことを、翌日はすっぽり忘れている
CASE 19 「やばい、言葉がでてこない」
人まででのスピーチ、途中で頭が真っ白になる
CASE 20 「どっちに行くんだっけ」
しばらく来ていないだけで、道順を忘れてしまう
CASE 21 「ほら、あの人だよ、あの人」
よく知っている芸能人の名前が突然出てこなくなる
第3章 これで「あれ?」にサヨナラ 忘れない覚え方 6つのポイント
忘れないポイント
- くり返す
- 最初はざっくり・だんだん細かく
- 経験に変える
- 注意を向ける
- ビジュアルのイメージに変える
- 空間記憶を活用する
はじめに
「そうなんだよ、あれがさあ。
・・・え、
”あれ”って何かって?
だから”あれ”だよ”あれ”。
ほら、何って言ったかな、いつも話してるあれ。
ほら、あの、その
・・・ん~
何だったっけ?
ああ、ここまで出てるのに、思い出せない・・・」
普段の生活でこんな会話が増え、脳の衰えを感じて自信を失い、落ち込んでしまうことはありませんか。
ある夫婦の旅行先での会話。
妻「大変ー私、アイロンをつけっぱなしで来ちゃったわ!」
夫「大丈夫。私も風呂の浴槽の蛇口を閉め忘れたから大事には至るまい」
こんなアメリカンジョークを聞いても「何だか身につまされる」という人が多いのではありませんか。
すごく簡単なことなのに。いま聞いたばかりなのに。よく知っているはずなのに。
―どうして亡心れてしまうのか。本書はそうした「あれ、出てこない」「しまった、忘れちゃった」の正体を探り、その解決法を伝授する本です。
私は30年前から速読法や記憶法を活用した試験勉強法を実践し、研究してきました。そのなかで「記憶」の正体が明らかになり、それに基づいて勉強をしていけば、とてもラクに効果的に記憶できることがわかってきました。
ここ15年は何千人もの受験生に、難関試験の勉強法をアドバイスし、その合格をサポートして、試験勉強本を中心に15冊、のべ25万部を超える本を出版してきました。
そんな私ですが、最近、試験勉強ではなく、日常の記憶の悩みについての相談を受けることが急に多くなってきました。そのなかで、あまりにも多くの人が「記憶」について誤解をしていて、そのためにムダな努カをして、しかも苦しんでいることに気づきました。
ほんの少しでも記憶の正体を知るだけで、また、覚えるための、忘れないためのテクニックを一つでも身に付けるだけで、記憶の悩みは激減します。このことを伝えたくて、今回、勉強本ではない、一般の方に向けた記憶本を書くことにしました。
今まで健康だと思っていた自分の脳が”フリーズ(動作停止)”する体験をくり返せば、記憶力が低下したのでは?とか、ボケや認知症の影がチラつき始めて不安になるという気持ちもわかります。
でも、忘れたことで不安になっても、そのまま一直線に「記憶力が落ちた」「ああ認知症だ」と突っ走らず、ちょっと立ち止まってみてください。
そしてまず、自分の記憶と向き合ってみてください。不安を拭い去るためには、何よりも”相手”を知ることです。記憶とはどういうものなのか。記憶の正体に少しだけ関心を持ってみてください。
記憶と向き合ってみれば、ずっと抱えてきた不安や悩みも、「なんだ、そういうことだったのか!」と吹き飛んでしまうでしょう。
相手の正体がわかれば、「あれ?」となったときにどうすればいいか、具体的な対処の仕方も見えてきます。
「さっきまで覚えていたのに出てこない」という(ど忘れ)から、「あれ?どこに置いたっけ?」という(もの忘れ)まで―。
本書には、日常生活のなかでのさまざまな「あれ、何だっけ?」のケースと、「思い出せない」「忘れてしまう」が起こるしくみの解説、さらには対処方法がたくさん出てきます。そして同時に、あなたの記憶をよみがえらせる方法や覚えるためのテクニックが、あちこちにちりばめられています。
それらは「フリーズして固まった脳」を再び活発に動かすためのヒント、記憶とラクにうまく付き合っていく手がかりになってくれるでしょう。
どうぞ、肩の力を抜いて気軽に読んでみてください。
あなたの「記憶」は、きっと変わります。
おわりに
スーパーでは1つか2つ何かを買い忘れ、しかも帰りに寄るつもりだったクリーニング店での受け取りまで忘れている―。こんなことがたびたび起こると「私の脳はいったいどうしちゃったの?」と心配になるかもしれません。そして、
若い頃はこんなことなかったのに・・・。
寄る年波には勝てない・・・。
こんなふうに、思い出せないこと、覚えられないことの原因は、年をとって記憶力が低下したせいに違いない、ひょっとしたら認知症の始まりかも、とことあるごとに、落ち込んでしまう。
自分と関わり合う人間の数、自分を取り巻いている情報量が爆発的に増えている現代社会で、私たちはその多さに、常に圧倒され続けて生きています。そんななかで私たちは、「忘れてしまう」ことに必要以上の恐怖感を抱くようになっているのかもしれません。
忘れることが大きな落ち度、人としての能力の低さという、ものすごくネガティブなイメージで扱われ、そのことが「もの忘れ」や「ど忘れ」に対する恐れや不安につながっているのですね。
でも、ここまで本書をお読みくださったみなさんならば、もうお分かりいただけたはずです。
「ど忘れ」や「もの忘れ」などは記憶力が低下したからではない。その多くは「覚えているけれど、覚えていない」記憶・ワーキングメモリのいたずらであること。そして、そもそも人間は「忘れる生き物」であるということを。
よくよく、記憶、そして忘れることに向き合ってみると、「さっきまで覚えていたのに・・・」「なぜすっかり忘れていたんだ・・・」と自分の記憶を責めていたことがバカらしくなってきたのではないでしょうか?
そしてさらには、「知らぬ間に整理して片づけまでしてくれてありがたいなあ」なんて感謝の気持ちまで湧いてきたかもしれません。一見、「しっかりしてくれよ」と思える脳の記憶も、人間が厳しい環境を生き抜いていくために進化してきたものなのです。
確かに、ここ数十年、爆発的に情報量が増える社会環境のなか、脳がアップアップになっているのも事実です。ただ、そこは優しく大目に見てあげてもいいのではないでしょうか?
地球に優しく、エコ(環境)フレンドリーなんていうのであれば、もう少し、私たち自身の脳に対しても優しくなってもいいと思います。そして、「忘れる」ことを通して、脳は私たちに何が必要なのか?大事なのかを教えてくれているのかもしれません。
こんなに情報があふれている時代ですが、よくよくみれば、本当に覚えておかなければいけないこと、忘れたら即生死に関わることなど、普段の生活のなかではまずありません。名前が出てこなくても、スーパーで何か買い忘れても、命まで取られるわけじゃない。
人間、命にかかわる重要なことは忘れません。わが身を守るために忘れない。そうできているのです。だから日常の些末なことは、ど忘れしても、頭が真っ白になっても、不安がる必要はないんです。
忘れるのが当たり前だと思えば、忘れたって不安に思うこともありません。忘れたくない重要なものは、記録する、くり返すなど工夫をすればいい。
この「気づき」を得たことで、みなさんは「あれ、何だっけ?」を遠ざける大きなチャンスを手に入れました。
名前を覚えられないのなら、くり返し呼んで覚えればいい。使ったものをどこかに置き忘れるなら、置き場所をしっかり決めればいい。よく買い忘れをするなら、ちょっとした買い物でもメモをすればいい。それだけのことなのです。
私たちの脳は、私たちが生き抜いていくために進化し、最大限の努力をしています。「記憶」というもの自体がその産物であり、進化そのものといってもいいでしょう。考えることも、人とコミュニケーションすることも、記憶なしにはありえないことです。
まずはそのことに感謝しつつ、不具合が出ているところは、ちょっとした工夫やヒントで”忘れないように記憶と付き合う”。これなら誰にでもできます。そう、記憶との付き合い方次第で、もの忘れやど忘れは改善できるのです。
だから、忘れることを怖がるのはやめよう。
忘れて当然だから、忘れない工夫をしよう。
本書がみなさんにそんな「気づき」をもたらし、記憶との付き合い方をくるりと変えるキッカケになってくれればうれしく思います。
宇都出雅巳
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